代表取締役 杉山 智行
東京大学法学部を卒業後、大和証券SMBCに入社し、日本国債などへの投資業務に携わる。
2008年にロイズ銀行東京支店に入行し、資金部長として支店経営陣に対して日本での事業機会について助言するとともに、運用子会社の日本における代表および運用責任者を兼務。
2013年にクラウドクレジット株式会社を設立。
早速ですが、どのようなきっかけで創業に至ったのでしょうか。
イギリスのメガバンクの1つであるロイズ銀行の東京支店に転職をしてすぐに、リーマンショックが起こりました。それをきっかけに銀行同士が互いに疑心暗鬼になり、預金の量が貸出の量よりも少なかったロイズ銀行は、銀行間市場でそのギャップを埋めることが難しくなってしまったため、世界中で資金を調達することを目指すことになります。
一方で、日本は預金金利がゼロでも銀行の預金は増加傾向で、日本銀行が金融緩和を行っても人口が減少していしまっているため貸付先が少なく、お金が余っている状況だったのです。そこで、イギリスのように資金が不足している国と、日本のような資金余剰国を繋ぎ、資金の流れを作り出すべきではないかと考えました。
最初はロイズ銀行の中で実現しようとしたのですが、組織が大きいためやはり自分が思ったようなお金の流れをつくるというのは難しく、それであれば自分で会社をつくった方が実現が早いと判断して起業に至りました。
創業されてからこれまでに危機などはありましたか?
資産運用ベンチャー企業は、いわゆる「死の谷」が2回あるといわれます。1回目は通常のベンチャー企業と同じ創業期です。ベンチャー企業で新しい仕組みをつくり世の中に広めようとする際には、まずその仕組みをつくるための初期投資が必要になります。
ただ、ベンチャーキャピタルが出資するのは100社に3社と言われているように、なかなか資金調達が難しく、売上が立っていないにも関わらず人件費などの固定費を支払わなければならない状況が続きました。
当社の場合は、2015年に伊藤忠商事等から出資を受けることができその危機をなんとか乗り越えることができました。
そして資産運用ベンチャー企業の2回目の死の谷は、創業「4年目」にくることが多いといわれています。
金融系のサービスは売上をつくるまでに時間がかかるのですが、一方で顧客の財産を預かるため、運営体制を強化する費用は削減することができないからです。正直、「えっ、死の谷って1回じゃないの?2回目もあるなら先に言ってくれよ」と思いました。当社の場合は、幸い再度出資を受けられたことで2017年からはもう一段階違う成長ができることになりました。
日本の投資家の方々にとって、貴社サービスはどのような点が魅力となっているとお考えですか?
1つは、金利に投資ができることですね。証券会社を使って資産を運用することはより一般的になってきていますが、ゼロ金利やマイナス金利が常態化したことにより金利に投資する機会が不足しています。その中で、私たちは世界のローンに分散投資をしていただく機会をご提供しています。
もう1つは、資金の受け手の顔が見える投資であることです。投資をする際に、自分が利益を得られるかどうかということはもちろん重要ですが、投資というのはそれを通じて社会全体を豊かにするものである、ということが忘れられてしまっているように思います。
自分の投資したお金が誰に届いてどのような成長を生むのかということがわかるため、投資を通じて応援もできるんだということを感じていただけるのではないかと思っています。
エストニアなどに子会社を設立されていますが、なぜその国を選択されたのでしょうか?
正直たまたまです。ヨーロッパで最初に融資を行うことにした国がエストニアだったのですが、エストニアという国は積極的に外国企業を誘致しており、税制も投資活動に有利で、融資の経由地としてのインフラも整っています。事業が拡大してきてから田にもっといい経由国・地域はないかとリサーチを行ったりもしたのですが結局エストニアから変更するほどのところはみつからず、ここを永続的に、各国に融資を行うハブにしよう、となりました。
今後はどのようなことを目指されていますか?
今年の6月に、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資することで、社会性と経済性の両立を目指す「社会インパクト投資宣言」を発表しました。
社会性という面で注目しているのが、2015年の国連サミットで発表された「持続可能な開発目標 (SDGs)」です。今年の5月には「貧困をなくそう」や「ジェンダー平等を実現しよう」といった目標に繋がるメキシコ女性起業家支援ファンドの販売を開始するなど、SDGsの達成に寄与するファンドを次々に立ち上げています。
今年2018年は貸付候補となる世界の企業をみつだすプロセスを確立することもでき、今後は黒字化前後のベンチャー企業への貸付を拡大するなど、投資家の方により多様な投資先をご提供できるようにしていきます。
それらを実現するために、どのような方と一緒に働いていきたいですか?
経験豊富な金融出身の方は、大きな組織で働いている方が高い収入を得られるかと思いますが、それでも私たちのようなベンチャー企業に来て、世界を繋げる金融など新しい金融をつくっていこうという意思がある方ですね。
会社のことは自分自身のキャリア上のミッション・ビジョンを体現する箱だと考えて、もちろん会社のミッション・ビジョンという枠はあるのですが、ご自身が実現したい金融を進めていただきたいと考えています。
最後にメッセージをいただけますか。
起業をする前に竹中平蔵さんが「若い人は新興国に事業をすべし、簡単にできるから」おっしゃられているのをなにかのメディアで拝読したことがあり、当時は「いやいやそうはいっても。。」と思ったものですが、実際に自分達でやってみて確かにそうだと実感しました。
もちろん全員が成功するわけではありませんが、先進国は古くて現在の実態にそぐわない規制や既得権益が多く、自分たちで物事を難しくややこしくしてしまっている側面がある一方、新興国はまだまだ自由度が高く、事業を推進しやすいと考えています。私自身はもともと海外に特別な興味があったわけではないのですが、必要なところにお金を届ける金融をやることを考えた時に、自然と世界に広がっていきました。
是非、海外でビジネスをしてみたいという方には新興国に挑戦をしてほしいと思います。
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