有限会社トーホーエージェンシー
代表取締役 山﨑 一彦

京懐石や料理店での板前を経て、2005年に鳥一代の一号店をオープン。
その後、多店舗展開と通信販売にて全国に展開。

早速ではありますが、開業に至った経緯を教えてください。

私は、もともと母子家庭で育ち、母が夜働きに出ていましたので、妹に料理を作り食べさせていました。作った料理を食べて「美味しい」と言ってくれる妹の顔をみて、喜びを感じていたこともあり、それから料理が好きになりました。
高校卒業してからは、京懐石での板前修業を経て親戚のお店を手伝っていました。ちょうど35歳の時に、一号店目に出した店舗のビルのオーナーと出会い、独立を決めました。
昔から、独立したいとは思っていましたね。ちょうど先日、20年程前の企画書が出てきたのですが、その時も独立したいと思っていたんだなと感じました。ただ、あの企画書をみてもどこもお金を貸さないなとは思いましたが、自分のお店を持ちたいという強い想いがなかったら、独立はできていなかったと思いますね。

これまでの経営において、危機などはありましたか?

5年前に新橋店が火事になってしまったことがありました。オープン7日目くらいだったのですが、設計ミスだったこともあり内装工事をし直したり、借り入れなどもして倒産する寸前でした。
ただ、先の目標を見据えながら、地道に目の前のことを積み重ねることで乗り越えていきました。お客様は一番ですが、従業員を何より大切にしていますので、その一緒に働いてくれる方たちと共に乗り越えていきました。
例えば、毎月、給与明細の後ろに一人ひとり100文字くらいのメッセージを書いてお渡ししています。店舗をまわって気づいたことや風邪が流行っていたら引かないように注意喚起するなど。外国の方には、あえて漢字で書いてルビを振り「仕事ってこう読むよ」という学びにもつなげて欲しいとも考えています。
創業当初、従業員6人だった時から60人になった今でも続けていますので、定着率は高いですよ。

従業員の方のことを、とても大切に考えていらっしゃるのですね。もとは居酒屋だったと伺いましたが、今ではサムゲタンが主流となっているのでしょうか?

そうですね。もともとは魚と地鶏の居酒屋なのですが、今では95%のお客様がサムゲタン目当てでご来店いただいています。
当初、業者から鳥をいただき、さばいた手羽先があまり使えるような大きさではなく、これを活かせるものはないかと考え、あみだしたものなんです。実際に、骨まで食べることができるのですが、これも実は、当時火を消し忘れて10時間も煮込んでしまったことがあり、もったいないからと言って賄いで試食してみたら、骨まで食べることができ、美味しいと好評になり、サムゲタンが人気となっていきました。

お客様に喜んでいただくために、工夫していることはありますか?

お料理、接客、居心地の良さは大事にしています。
「すみません」と声をかけられない接客をしなさい、その前に気付きなさいと伝えていますが、居心地の良い接客をすること、気持ち良く食べてもらうことを心がけています。
好きな店だったら好きな人や大事な人を連れてくると思いますし、その繰り替えしがいい店になり、積み重ねになるのだと思っています。
また、今後ロボット化されていく時代の中で我々外食産業の強みは、お客様や人と人とのコミュニケーション接客だと思っています。そのため、例えば梅雨の場合には「雨の中ありがとうございます」と伝えていますし、月報に書いたり、お店の看板にも毎日メッセージを書いています。

今後、目指していることはありますか?

店舗展開の目標はありますが、従業員のみなさん全員に、どこか光るものがあると思っていますので、従業員と一緒につくっていきたいと思っています。
また、自分の店だけではなく、商店街や地域をよくしていきたいと思っていますので、震災復興支援やイベントに出ることを行っています。
あとは、休みが多い会社にしていきたいですね。飲食業界は、みなさんが休む時に働く仕事ですし、拘束時間が長くなることはしょうがないですが、当店はやり方を変えることで、忙しくなっていますが休みは増えています。

今後のお店づくりも、どのような方と一緒につくっていきたいですか?

私自身、飲食は楽しい仕事だと思っていますので、若い方にも目指して欲しいと思っています。
器用ではなくても良いですが、誠実な人と働いていきたいですね。誠実であれば、こちら側で育成ができますし、ポリシーを持っている人の方が伸びる可能性が高いと思いますので。

最後にメッセージをいただけますか。

飲食業界は、体さえ元気であれば好きな商売として続けられると思っていますので、センスと雰囲気づくりができれば商売はできると思っています。
そのような人たちが集ることで、接客も料理も教えてあげることはできますし、飲食っていい仕事だと思って欲しいと思っています。
「ありがとう」や「楽しかった」をダイレクトに答えをもらえることや、コミュニケーションが好きな人であれば、是非、飲食業を目指して欲しいと思っています。

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http://www.samugetan.com/